理系彼女と文系彼氏(旧)
「それで、何故来たんですか?」

「お迎えだよ」

さら、と言われて恥ずかしくなる。

眩しい笑みにくらっとしてしまった。

「い、何時から待ってたんですか?」

「んーとね。五時半」

………ただいま、七時ちょうど。

一時間以上前から、とか。

「馬鹿ですか?待たなくて、よかったのに」

言われてみれば、月見里君の額には汗が浮かんでいる。

七月上旬だとはいえ、それだけ待てば暑いだろう。

「待つに決まってるよ。僕は理恵ちゃんと一緒に登校したいから。理恵ちゃんは違うの?」

「違っ………くないですね」

「ふはっ、何それ。理恵ちゃんも僕と一緒に行きたかったんだぁ。嬉しい」

電車はちょうど通勤、通学時間だからか、とてもこんでいる。

いつも潰されながら登校しているけど今日は違う。

「理恵ちゃん、辛くない?」

辛くはないけど、辛いです。

近すぎる。

何がって、顔が。

今の状況説明。

車両の隅っこで月見里君に壁へと押し付けられている。

漫画とかでは割りとよく見る光景ではあるけれど。

実際は落ち着かないにも程がある。

確かに人の波からは守られていて、安心ではあるけれど。

月見里君の綺麗な顔が近すぎる。

少し上にある彼の目がこっちをじっと見つめているのも恥ずかしさの原因。
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