ポケットダーリン
頼んだカシスソーダとオレンジジュースが運ばれた後、ようやく叶人が口を開いた。
「俺に、何か言いたいことない?」
「…別に」
ぶっきらぼうに言い放つ。
「…俺は、ゆうりに言いたいことがある」
そう言うと、叶人はガバッと頭を下げた。
「ご飯、作ってくれてたのに食えなくてごめん!!」
「えっ‥ちょ、」
突然の出来事に、動揺して目が泳ぐ。
「…前もこんなことあったよな。ゆうりのご飯、すっごい楽しみにしてたのに、代表の誘いはやっぱ断れなくてさ。すげー世話になってるし」
こくん、小さく頷く。
「クズだった俺を、ここまで育ててくれた人だからさ、大切にしたいんだ。」
解ってる。でも‥
「でも、ゆうりのことも俺は大切に思ってる。一緒にいると安心するし、すげー支えてくれてるし、本当に感謝してる。代表にも、めっちゃ良い彼女じゃん、て言われたし」
知らないところで、あたしのこと話してくれてたの‥?
「ご飯のことは本当にごめん。…今日さ、もっかい作ってくれない?ゆうりのご飯が一番好きだし」
そう言って優しい笑顔を向けるあなたはずるい。
今回もまた、簡単に許してしまった。