ポケットダーリン

頼んだカシスソーダとオレンジジュースが運ばれた後、ようやく叶人が口を開いた。


「俺に、何か言いたいことない?」

「…別に」

ぶっきらぼうに言い放つ。

「…俺は、ゆうりに言いたいことがある」

そう言うと、叶人はガバッと頭を下げた。

「ご飯、作ってくれてたのに食えなくてごめん!!」

「えっ‥ちょ、」

突然の出来事に、動揺して目が泳ぐ。

「…前もこんなことあったよな。ゆうりのご飯、すっごい楽しみにしてたのに、代表の誘いはやっぱ断れなくてさ。すげー世話になってるし」

こくん、小さく頷く。

「クズだった俺を、ここまで育ててくれた人だからさ、大切にしたいんだ。」

解ってる。でも‥

「でも、ゆうりのことも俺は大切に思ってる。一緒にいると安心するし、すげー支えてくれてるし、本当に感謝してる。代表にも、めっちゃ良い彼女じゃん、て言われたし」

知らないところで、あたしのこと話してくれてたの‥?

「ご飯のことは本当にごめん。…今日さ、もっかい作ってくれない?ゆうりのご飯が一番好きだし」


そう言って優しい笑顔を向けるあなたはずるい。

今回もまた、簡単に許してしまった。

< 20 / 33 >

この作品をシェア

pagetop