ポケットダーリン

しばらくしてトイレから出てきた叶人は、そのままあたしの席には戻らず、店の外へと出て行った。

あたしの席には新人のヘルプがつけられ、まだ慣れないトークにたじろぐその姿さえも、その時のあたしにとっては煩わしくて仕方なかった。


「いらっしゃいませーぃ!!!」


店内に響く叶人の声と、後ろを歩く綺麗な女の人。

嫉妬と劣等感に苛まれる。

見たくないはずなのに、何度も見てしまう。


その女に笑顔なんて向けないで

そんなに近付かないで

あたしの叶人に触れないで…!


「ヴーヴ2本とオリシャン、ラーセン、ピンドン入れて!早く!!」


気付いたら叫んでいた。

ヘルプの新人は慌てて店の裏へ駆けて行く。


さぁ戻ってきて、早く…!

あたしの叶人…

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