おかしな国のアリス
何度も角を曲がり、やっと光の差し込む出口が見えた。
「アリス、トランプは?」
猫がこっちを向く。
…トランプ?
「…ああ!」
「ああ!…じゃねぇよ!なくしてねぇだろうな?」
「え?…あ、当たり前でしょ!」
…しまった記憶がないよ…
ど、どうしよう。
ポケットの中?
それとも頭の上?
…それはない…
落ち着いて思い出すのよアリス…!!

まず、上でトランプをこすったら小さくなって、猫に扉から落とされて、トランプも後から落とされて…それから…?
「…」
「アリス?」
「…」
「アリス!」
「…」
猫の溜め息。
どうしよう、私…取り返しのつかないことしちゃった…
「…なくしたなら素直に言えばいいだろ」
「…だって…」
「あーもう、泣くなよみっともねぇ!
ガキじゃねぇんだから…」
がしがし、猫の手が私の頭を乱暴に撫でる。
「そんなこと言ったって…
トランプがなくちゃ帰れないんだよ?」
「こっちには、もっと高性能なトランプがあるだろうよ」
「…へ?」
もっと高性能なトランプ?
…まさか
というか、それしかないけど…
「私が居ればこんなもの!すぐに大きくしてさしあげます」
「本当に!?」
「もちろん。私は高貴たるトランプ兵ですよ?」
よ、よかった!
なんかうさん臭いし信用ならないけどよかった!
すると、トランプ兵が突然自分の手を胸にあて、歌いだした。
『…big…big…』
この歌…こっちにきた時と同じ歌…
そう思った瞬間に、私たちは小さな扉の前に居た。
…帰ってこれた!
「よかった!
ありがとうト…あれ?」
居ない。
トランプ兵は…?
「自分自身は、きっと帰ってこれないのでしょう…それこそ、トランプがなければ。」
白兎が言った。
「…嘘…そんな…」
私は扉の中を覗きこむ。
そこには、上を向いてほほ笑む、小さなトランプ兵は
「またお会いしましょう、アリス。
それまで、どうかお元気で。」
言って笑みを深くした。
「…トランプ兵…
…あなたも、元気でね。ごめんなさい…」
「ああ、アリス。謝らないで。私はアリスに謝らせるために言ったのではありませんから」
それでは、私の分も頑張ってくださいね…そう言って、トランプ兵は闇に溶けた
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