おかしな国のアリス

◇逃げも隠れもしないで

猫を先頭に出口を目指す。
「それよりアリス」
「うん?」
「なぜ、トランプ兵が?」
「んーと…」
どう説明するべきか迷っていると、
「女王に実験されて苦しかった上にあの内戦から今まで牢屋に閉じ込められていた恨みを晴らすために同行させてもらってます」
トランプ兵が自ら説明した。
…簡潔。
「…なるほど。
あなたが例の097番ですか…
こんなところに閉じ込められてたのですね」
「097番?」
「このトランプ兵の製造番号のようなものです。」
「ふーん…」
なんか、ナマナマしいなぁ…
くす、とトランプ兵が笑う。
「ご存じでしたか」
「ええ、もちろんです。
あなたのような存在は、私たちにとって脅威でしたから…」
「なるほど。
それで、開発される前に終わらせたと」
白兎がうなずく。
「ですが、大人しく終わってくれるとは思いませんでした。
…あなたを使って、僕らを完全につぶしにかかるかと」
「はは、本当はそのつもりだったんでしょうけどね。
アリスが生まれてしまったから、女王が中止したのです。」
「わ、私?」
二人の会話に突然私の名前が出てきて、思わず反応する。
「ああ、アリスのお母さんのアリスです」
「そ、そっか」
紛らわしいなぁ…
「では…アリスが僕たちを救ってくれたんですね」
「私はひどい目にあいましたがね」
苦笑するトランプ兵は、どこか悲しげだった。
なんか…悪いことをしたようで、私はいたたまれないきもちになった。
「…ごめんなさい」
「そんな!すみませんアリス。謝らせるために言ったんではないですよ」
「ううん…ごめんなさい」
もう一度謝ると、トランプ兵は困ったように笑った。
「アリスは優しい」
「そんなこと…」
「うぉいてめぇら!
置いてくぞ!」
猫の声が響く。
出口まで、後少し。
< 45 / 60 >

この作品をシェア

pagetop