おかしな国のアリス
驚くべき速度で女王の後ろにまわったチェシャ猫は、前に自分がされたように女王を羽交締めにした。
「っ…屈辱ですわ」
「だったら大人しくだらだらしてたらよかったじゃねぇか。」
「……」
二人に、白兎が近付く。
「…殺すの?わたくしを…」
「いえ、そんなことはいたしませんよ。」
白兎がニコリと笑って言った。
「時間を巻き戻させてください。
僕らだけでは止める事しかできない。」
「…解りましたわ」
白兎が床の銃を拾うと、チェシャ猫が女王を開放した。
「…こちらですわ」
女王らしい、ゆっくりとした動きで二人は部屋の奥に誘導される。
壁の模様と同調させて隠された扉。
女王がその扉を押して開けた。
扉の先には、大きな時計があった。
「…これが、この国すべての時…」
白兎が、首にかかった懐中時計を握り締める。
「…」
「…時を戻しますわ…この日、この物語の始まりまで…」
女王が、時計の後ろに回り、針をくるりと左に回した…――
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