おかしな国のアリス
「ったく…客を床に寝かすたぁ、どんな接客だ?」
「チッ…」
頭を右手で押さえながら、チェシャ猫がゆっくりと二人の間合いに近付く。
女王が、両手で銃を構えた。
「つまんねぇエモノだな…構えも不安定だ。当たっても死ななそうだなー。」
その言葉に、女王が顔をカァッと赤くする。
「どいつもこいつもわたくしに口答えするなぁぁあ!!!」
ドカンッガンッ
2発の弾を、チェシャ猫に向かって放った。
「チェシャ猫!」
白兎が、微動だにしないチェシャ猫のそばに寄る。
「あー…嫌だね…怒りまかせっつーのは」
「!」
白兎は、どちらか一発位は当たったと思っていたが…チェシャ猫は無傷。
「…性能わりぃな、その銃。ほれ」
キン、とチェシャ猫が床に何かを放る。
「…?…!!!」
怒りで息を荒くした女王がそれを見て絶句した。
「…弾…!?」
「おう。いらねぇから返すぜ」
にぃっ、と笑うチェシャ猫。
さすがの白兎も驚きを隠せなかった。
「で、女王。
お前さんはなんだ?
なんも関係ないアリスにこんなことしてよぉ…気分爽快か?」
「ええ!とてもいい気分よ!
けれど、あなたのせいでその気分も台無しですわ!」
女王が、また銃を構える。
震える両手で。
「…だからさぁ」
ふ、とチェシャ猫がかがんだと思ったら、次の瞬間にはその場から消えていた。
「…おっそい」
「!!」
ドン!
驚いて撃った弾は、さっきまでチェシャ猫が居た場所の遥か横をかすめて、壁に食い込んだ。
「…」
「…か弱い女王様には、こんな重たい拳銃似合わねぇよ」
ガチガチと歯が当たる音。
ゴトンと重たい音を立てて、黒い銃が床に落ちた。
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