鉄の薔薇姫
4章

薔薇姫




ウナイ山脈の前山に野営を張るのは第一遊撃隊の300名だ。

もう半刻もすれば出発である。
第二遊撃隊・第三遊撃隊はすでにウナイ山の両サイドの山中潜んでいる。

更にその外側を騎馬兵1万が固めてある。
これはハダ帝国軍騎馬兵の半数にあたる。

斥候の情報では、シナシ帝国軍は予定通りウナイ山に向け、主力部隊を進軍させている。
その数、歩兵、騎馬を合わせ3万。

表向き、双方ほとんどの兵力を海戦に注いでいる。
シナシが陽動作戦の漏洩に気付くときは、主力部隊の敗走を知るときだろう。


「全軍、前進」


シアが命令をくだし、300の騎馬が音もなく動き出した。

第一遊撃部隊は先陣として、ウナイ山中腹まで登り、繁みに潜伏した。
背を山肌、目の前には崖という地形である。

ウナイ山脈は切り立った山々で、細い道、足場の危ういルートが多く、ここもそのひとつだ。
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