月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 爪は伸び、怒りと哀しみ、苦痛のせいでハンドルを握り潰してしまいそうだ。


 後ろを確認しようとバックミラーを覗くと、自分の瞳に気がつく――琥珀色の瞳は、濃さを増して人狼のそれになっている。


 口の中に血の味を感じて、牙が伸びはじめていることも意識させた。


 元に戻るよう意識を集中させるが、戻すことが出来ずそのまま車を走らせはじめる。


 まだ朝早い時間だけに、通っている車は少ない。


 だからといって、スピードを出しすぎて警察に捕まっては時間が無駄になる。


 狼呀は速度オーバーギリギリで走らせた。


 その間、何度も電話をかけるが、出たと思えば留守番電話サービスに接続される。


「くそっ!」


 頼りになるのは、切れたばかりの絆が残す道筋だけだ。







 
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