女神の災難な休日
雅坊をシートに固定するのに成功すると、彼の上からひざ掛けをかけておく。それからおもむろに散らかった後部座席を片付けだした。マザーバックから出してそこら辺に転がっている全てのものを片付ける。いざという時、こんなに散らかった状態ではどうしようもない。
「・・・おい、変なことするなよ」
運転席から男が言うから、不機嫌そのものの声で答えた。
「うるさいわね。自分の車で何しようが私の勝手でしょうが。あんたがいきなり乗ってきたから片付けられてないのよ」
言いつつ手を動かしていると、前でうんざりしたって声が聞こえた。
「一応言っておくけど、携帯で外へ電話するのは止めてくれ。あんたらは人質だってこと忘れないようにな」
「一応言っておくけど、もうすでにコンビニからの通報で警察が動いているでしょうから、私が電話しようがしまいが一緒なのよ」
ついでにいうと、メールなら今までだってやりたい放題だったのだ。だって後部座席に座っているのだから。そんなことにも考えがいかないなんて、本当に行き当たりばったりの犯行だったのだろう。
手を動かしながら私は安堵のため息をつく。この男が頭悪くて、本当に良かった。でないと今頃私と雅坊がどうなっていたか判らない。ああ、神様がいるならその点だけはお礼を言いたい。もっとも、こんな面倒臭いことに巻き込んでくれたことに関しては文句を言いたいが。
「・・・全く」
私が言い返すことに更に疲れたらしい男がそう呟く。包丁さえもってなければもう一度蹴りをいれたかった。全くって、それはこっちの台詞でしょうがよ!!ほんとイライラする。