女神の災難な休日
何とか片付けを終えた私は、よし、と気合を入れた。それから後部座席から身を乗り出して、助手席へと移動を開始する。
「え!?お、おい!」
「うるさいわね。やっと子供が寝たのよ。あんたの下手な運転ではすぐに酔いそうよ。何なら運転代わりましょうか?」
そしたらそのまま警察に突っ込んでやる。
私を睨んで、男は歯軋りをした。
「もう何でもいいから黙っててくれ!」
文句は無視して助手席に座ることに成功する。シートベルトつけなかったら通りかかった警察に停められたりしないかしらって考えたけど、自身の安全の為にシートはしめておいた。
「さて、どこまでいくのか本当に答えてよ。今は忙しくて動けないはずだけど、うちの夫にこれがばれたら大変なんだから、さっさと終わらせてくれない?」
口の中でぶつぶつと文句を言っていた男は眉間に皺をよせたままで言った。
「お前ら降りるか?車、俺に貸してくれ」
「ふざけないで、あんたがさっさと降りなさいよ。最初の話と違うじゃないのよ」
「・・・えらく余裕だな、こっちにはこれがあるんだぜ?」
右手でハンドル、左手で包丁を握った状態で、男が笑った。
――――――――――きた。