にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「ああ、着いた。マジで腰痛いわ」
運転手にお金を払い、ビーグルの助けを借りて店の中に入った。相変わらず、何歳も年上の私を女の子扱いしてくれるビーグル。
段差などのちょっとした気遣いから至近距離に近づいただけで赤面したり、自分も女の子として意識されているんだなぁ、と再確認した。
ミィコも女として扱ってくれているのかもしれないけど、あのキスは愛情からくるものとはどうしても思えない。だって軽すぎるから。チュッチュ、チュッチュされるとキスの有り難みというか猫に舐められているようなそんな気持ちだ。
キスって……もっと愛を確かめ合うようなのがキスじゃなかったっけ?
なんだか恋人がいたのは何年も前の話で記憶が薄れているけども、キスって確かそういうものだったような気がする。
「ありがとう、ビ……火伊くん」
心の中ではいつもビーグル、と呼んでいるので危うくビーグルと呼んでしまうところだった。もう店には着いたし、特にビーグルにしてもらうことはない。だけど、ビーグルはそこから動こうとはしなかった。
「?」
「由比子さん、小宮さんて彼氏なんですか」
「え? 違うよ?」