ご近所恋愛(笑)
「こいつが子猫ちゃんのお隣の八雲 遥(ヤクモ ハルカ)」
「なっ…!てことは、ここの住人…!?」
「は?ちょっと待って。ねぇ、どういうこと、泉」
「どういうことも、この子猫ちゃんは今日からここに住むことになった子だ」
「…藤咲 菫です。よろしくお願いします」
不服だが、挨拶しないのは失礼だ。渋々挨拶をすると、八雲さんは暫く放心していた。
「おい、とりあえずてめぇら早く座れ。メシが冷めるだろ」
「「……」」
家主さんの一言で、私たちはお互い無言で席につく。
「うわぁ、険悪~」
呑気にケラケラと笑っている樹さんに、初めて殺意を覚えた気がする。
とりあえず、今は忘れて食事に集中するとしよう。
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
みんなで揃って挨拶をして、食事に手をつけ始める。
真田さんの料理は思ったよりも凄かった。まるで店に出てくるんじゃないかというくらいに綺麗に飾り付けられていて、食べるのが勿体無いくらい。
味も申し分なかった。
だが、私の目の前が八雲さんのせいで、美味しさ半減だ。
「どうしたん菫?さっきからごっつ怖い顔しとるで」
「…いえ、何でもありません。ついでに言うと、ご飯凄く美味しいです」
「だって~、よかったねー、誠くん」
ご飯を口に放り込みながら、ちらりと八雲さんを見やる。相変わらず、こちらを睨んでいた。
そんな私を気遣ってくれたのか、隣の泉さんが私のコソッと耳打ちをしてくる。
「遥ちゃんは超人気アイドル、あのHARUKAだぜ、子猫ちゃん」
「へー、そうですか。…って、えええええ!?」
私は泉さんと八雲さんを高速で交互に見る。確かに、あの人気アイドルHARUKAだ。
別にアイドルに興味がない私でも、知っているくらい。
それで先ほどファンとかストーカーとか言ってるのが理解できた。ただの自意識過剰ではなかったようだ。