もうひとつの偽聖夜
次の日、俺はやおちんの紹介で、あるイベント会場のバイトをするはめになった。
八百屋の跡継ぎを蹴ってうちを出たやおちんは、イラストレーターを目指し、日夜、バイトに明け暮れている。日雇い、日払いのバイトを見つけるのはお手の物だ。
「肉体労働?そりゃゴメンだ」
「………」
「顔出し?おめえ!昔の女にこの無様な俺様の姿を晒すのだけは勘弁してくれ」
「………」
「IT関係?スマホしか触った事ねえよ」
「ったくてめえ、働く気あんのか?」
さんざん俺に文句を垂れまくられながらも、やおちんが探し、手配までしてくれたこのバイト。
「大丈夫だ。これはマサ、おめえのために存在してるといってもいいほどのとびっきりのバイトだ。立ってるだけで、顔なんて絶対にバレない。そして、何一つ頭を使うこともない。どうだ、飽き性のお前でも刺激さえありゃ、やり過ごせるだろ?それで一日8000円!どうだマサ!」
「なんだよ、やるときはやるじゃねえかよ!やおちん!それで手を打った!」
ところが――
「わーい!サンタさんだ~」
「ママ、こっちにもサンタさんいるよ!」
「なんでこのサンタさん、元気ないの?」
俺は、ガキども向けのイベント会場で、『おもしろ実験はこっちだよ』と書いた看板を持って佇んでいた。