もうひとつの偽聖夜
「サンタ!お前偽物だろ?一緒に遊ぼうぜ」
「たりめえだ!本物なわけねえだろうよ」
ったく、ガキっていうものは、本当にしつこいものだ。
団体がやってくるたびに、皆が俺の周りに駆け寄り、ひと時離れようとしない。中には俺のサンタの衣装を掴み、コバンザメのように離れないガキまでいる。
「こら、コバンザメ一号!お前、今、俺のケツ蹴りやがったな」
「二号、こら、看板持ってくんじゃねえ!ここに置いとけ」
「いてっ、誰だ!浣腸したのは!おめーか、正直に名乗り出ろ」
――いったい俺は何をやってるんだ?なにが、とびっきりのバイトだ。
この、ガキどもと戯れる自分の状況が理解できない。
「ったく、てめえーら、早く『おもしろ実験』とやらに行ってこいよ!」
「おい、ニセサンタ!ほんとにソレ面白いのか?」
「おもしろ実験ってゆうぐらいなんだから面白いんじゃねえか?それで面白くなかったら、文句の一つもカマしてきやがれってんだ」
「もし、面白くなかったらニセサンタのせいだからな」
「俺が関係あるか!さあ行けっ二度と帰ってくんなよ!」
一団体が俺に飽き、ほっと胸をなで下ろしていると、また新たな団体がやってくる。
そして、また、同じような俺とのバトルが始まる。すると、その様子に気づいた、さっき、去っていったはずのコバンザメたちが戻ってきて、新旧コバンザメたちの争いに俺は巻き込まれる、というシステムだ。
――やってらんねえ。やおちんの野郎、覚えとけ?
その会場では、やおちんがバイトで書いたイラストのサンタが、あちこちで、俺に目を光らせていた。