バース(アイシテルside伸也)

「行くぞ」



本当は亜美の手を握り、連れて行きたいところだが……



コイツは男に触れられる事を嫌がる。



だから仕方なく俺は途中まで出た手を引っ込めた。



そんな俺の言葉に何の反応もしない亜美。



「おい。聞こえてんのか?」



「行くぞって」



わざとシカトしてんのか?



「あんたのものじゃない」



「えっ?」


亜美の発した言葉にカズが目を真ん丸くして驚いた声を出す。



そりゃ、そうだろう。



この街で俺にこんな口聞く奴なんて数えるほどしかいねぇ。



コイツはそんなことお構いなしだが……
< 161 / 355 >

この作品をシェア

pagetop