バース(アイシテルside伸也)

「付き合っている」と答えれば亜美には触れない。



「付き合っていない」と答えるなら……最後に俺の悪あがきを許してくれ。



俺の予想を裏切るように、亜美は何も答えずに俺の背中に手を回す。



俺を抱き締めるように、回した手に力を入れる亜美に戸惑っていた。



今、目の前で起こっている行為に、どういう意味があるのかと……



「亜美の体温、心地いいな」



一向に体を離そうとしない亜美。



これ以上、亜美に触れていれば、俺は理性を保っていられる自信がない。



言葉と共に体を離すと、何かを訴えるような瞳が俺を捕えた。



俺はその瞳に吸い寄せられるように、亜美の口元に近づいた。

< 270 / 355 >

この作品をシェア

pagetop