婚カチュ。
「あの、戸田さんとの交際について、ご相談したいことがあるんです」
「わかりました。では先に面談室でお待ちください。すぐにうかがいます」
そう言って彼はスタッフルームのドアをくぐっていった。
広瀬さんは紅茶カップを持って面談室に現れた。
いつもと同じハーブティーは薄い小麦色のオリジナルブレンドだ。心地よい香りにからだがほぐれる。
「で、どうされました?」
椅子を引いてわたしの正面に腰を下ろすと、彼のメガネがきらりと光る。その場所がちょうど照明を反射する角度なのだと、何度も相対してようやく気付いた。
「ええっと、じつは」
ネガティブな言葉をなかなか言い出せない。これまでのことを考えれば、広瀬さんは確実に鬼モードになって雷を落とすだろう。
言いよどんでいるわたしを彼はまっすぐ見つめる。目を合わせることができず、わたしは視線を下げた。
「その、戸田さんとのお付き合いを続けるべきかどうかで、悩んでるんです」
ようやく切り出すと、広瀬さんは考え込むように言った。