婚カチュ。

悄然としている弁護士先生は、どうやらわたしと松坂を恋仲だと誤解して様子がおかしかったらしい。
　
わたしはおもいきり首を振った。


「ただの、先輩後輩です！」
　

不意打ちでキスをされたことはあるけれど、告白はしたことも、されたこともない。
　
松坂の可愛らしい顔が甦る。
怒りすら込み上げた。人畜無害そうに笑いながら、あいつはいったい何をやっているんだ。
　
いきなり結婚相談所に現れたり、戸田さんに勝手に土下座をしたり。
当事者であるわたしには、なにひとつ言わずに。


「なんだ、そうか……よかった」
　

目を向けると、戸田さんが安堵したように微笑んだ。


「つまり彼の片思いってことだな」
　

注がれる視線に決意のようなものを感じて、わたしは急に緊張した。


「戸田、さん？」

「私はいい人ではないから、みすみす君を他の男に譲る気はないよ」
　

強い視線に貫かれ、息を呑む。