婚カチュ。

3  ◇ ◇ ◇

 
真正面から想いを告げても成就しないとわかっていた松坂は、外堀を埋めていこうとすこしずつ行動を起こしていた。
 
ほかの誰もが気付いていた彼の気持ちに、わたしだけが気付かない。

それでもストレートに告白することはなく、わたしの記憶にちいさな引っかき傷をつけるように、意味深な言動を繰り返し、彼のことを考えさせるように仕向けたのだという。
 

暗闇のオフィスでさりげなく感情をさらし、その後、一緒に会社を出て、途中で別れたように見せかけてわたしのあとをつけ、結婚相談所がフェリースであることを突き止めた。
 
 
 

好きなひとに好きになってもらいたくて臆病になる。

気持ちが強いほど如実になるその葛藤を振り払い、現実に行動を起こした松坂を、なんの行動もしなかったわたしが、責めることなんてできない。



< 225 / 260 >

この作品をシェア

pagetop