婚カチュ。
「こんな状態であなたを抱いたら、こっちがトラウマになるじゃないですか」
わたしの胸にしがみついて、松坂は声を殺して泣いた。
しばらく動けなかった。
子どものようにわたしに抱きついて嗚咽をこらえている彼の、まっすぐで傷つきやすい心が、擦り剥けて血をにじませている。
わたしは静かに起き上がり、彼の震える肩を抱きしめた。
「ごめん」
知らなかった。
「ごめんね松坂」
そんなふうに強い想いを抱いていたなんて、全然気付かなかった。
「ごめん」
彼の背中を撫でながら、からだに染みこんだ雨の匂いをかいだ。
わたしの好きな抹茶ラテのカップを持って微笑む後輩の顔を、思い出した。