婚カチュ。
 

ここにいる8人はみんなフェリースの会員だった。

スタッフ立ち会いのもと、最初におのおのが自己紹介をして現在は歓談タイムに入っている。

男性は4人とも30代で、みんな似たようなスーツ姿だった。自己紹介のときに職業についても話していたけれど、どのひとが何の仕事に就いているのかは忘れてしまった。
 
皿を持ったまま、わたしはインコの生態を調査するように会員男女の動きを観察する。
 
男性のなかでいちばん雰囲気の良さそうな人はすでにふたりの女性にマークされていた。
にこやかに談笑する彼ら3人のそばで、小太りの男性がひとり輪に入ろうと頑張っている。
 
壁沿いに並べられた椅子には真剣な様子で話し込んでいる男女が一組いた。よく見ると熱心に話しているのは男性だけで、女性は相槌をうちながらどこか上の空だ。


「ええと、二ノ宮さん、だっけ」
 

最後のひとりに声をかけられた。

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