婚カチュ。
背丈だけならわたしの理想通りだけれど、痩せぎすでどこか卑屈そうな顔をした男性だ。
高級な腕時計を嵌めているのに濃紺のスーツはからだのサイズに合っておらず、どこかちぐはぐな印象を受けた。
このひとの名前はなんて言ってたっけ。
だめだ、覚えてない。
「はい」とだけ返事をすると、彼はぎこちない様子で笑った。
「あぶれたもの同士、話しましょうか」
「あぶれたもの……」
「ぼくこういうの初めてなんですよ。アドバイザーにはどんどん話しかけろと言われたけど、なかなか難しいですよね」
男はそう言って口端を上げた。いやな笑い方だった。
「そうですね」
適当に返事をして、ウーロン茶のグラスを口に運ぶ。残念ながらアルコールは用意されていないらしい。
男性はテーブルの反対側で談笑している3人組が気になるようだった。わたしに話しかけながらやたらと向こうに視線をやる。
「やっぱり、女は士業に弱いんだなぁ」
ぶっきらぼうなつぶやきについ反応した。
「シギョウ?」