婚カチュ。


「そんなの、好きな人ができてから言いなよ。シイちゃん、むかしっから理想高くて全然男を好きにならないじゃない。いつも夢みたいなことばっか――」
 

言いかけて、ふいに言葉を切った。じっとわたしを見つめ、静かに口を開く。


「え、まさか……好きな人、できたの?」



答えないでいると、彼女は箸を置き、わたしを追い詰めるように身を乗り出した。


「誰、相手。相談所で会ったひと?」
 

希和子の本気の追求からは逃れられない。
腹を括り、わたしはうなずいた。


「ええと、まあ……そうかな、一応」

「うっそ、なんで早く言わないの! アドバイザーには言ったの?」

「え、いや。……だってまだ、気になる程度で。相手のこともよく知らないから」
 

胸の底で確かにときめきを感じているけれど、まだ好きのレベルには達していない。無条件で男性に落ちれるほどわたしは若くはなかった。

無垢でも無防備でもない、大人の女はきっと、ひとを好きになるにも心の奥で計算が働く。

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