婚カチュ。


居間のソファに座って先代のレオを抱きながら、わたしは最終回に涙した記憶がある。確か、そのときのわたしの服装は――
 
高校の、セーラー服。
 

鉛でものせられたようにがくりと肩が落ちた。


「わたしが高校生のときに、小学生……?」
 

なにかの間違いじゃないかと思ったけれど、考えてみれば蒼もあのとき小学生だった。
黒いランドセルを背負っていた弟の顔を思い浮かべ、わたしは頭を抱える。
 

高校生が、小学生をって、犯罪じゃない。



ダイニングでひとりもだえるわたしに気付き、母親がどうしたの、と声をかけてくる。


「そんなに踊りだすほどお母さんのごはんが美味しい?」

 
冗談交じりの言葉に


「うん、最高」
 

と真顔で返すと、母親はつまらなさそうに唇を突き出しテレビに向き直った。
 
わたしの母親は年齢からすれば童顔だけれど、やっぱり年相応に老けている。
そう考えると、母と5つしか違わない桜田さんの若さは恐るべきものだった。
 
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