婚カチュ。


桜田さんと広瀬さんはずいぶん年が離れているけれど、となりに並べばそんなに不自然ではない。

美男美女で、お似合いと言えなくもない。


「広瀬さんて……熟女好きだったんだ」
 

あきらめろと牽制され、わたしの恋の火種はあっけなく水をかけられてしまった。

皿に盛られた豚肉を箸で拾い上げながら、ひどく悲しい感情がこみ上げる。
 

まだ好きになっていないと思っていたのに。

わたしの心は思ったよりもダメージを受けているみたいだ。

 
こういう胸の痛みは懐かしい。

 
新鮮で、でも切なくて、わたしはすこし泣きそうになった。
 







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