聖なる夜の願いごと


お互い何か変だと思いながら、黙り込む。

求めている答えが返ってこず、どうしたものかと途方に暮れていたニーナはふと机の上の招待状を見つける。

封は開けられているが、少し不安に思ってニーナは招待状を指さす。



「シルバ様、その招待状よく読まれましたか?」

「よく読むも何もただのクリスマスパーティーの招待状だろう」

「やっぱり……」

ニーナの嫌な予感は当たっていた。



「もう一度、よく読んでみてください」

声を落としてそういったニーナにシルバの不安が煽られる。

招待状を手に取り、二つ折りの厚紙を開き、書かれている文字に目を通すシルバ。

そして、書かれていた内容に目を見開く。

書かれている内容は確かにクリスマスパーティーへの招待を知らせるものだった。

しかし、オベール公爵家のクリスマスパーティーの招待状にはある言葉が添えられていた。




“聖なる夜を愛する人たちと”



クリスマスには特段珍しくもない言い回しだが、その下を見てみると納得がいった。

シルバはそのメッセージを読み終え、眉を寄せて後悔した。

不意に浮かぶのは昨夜のエレナの表情。

嬉しそうな顔から一転、戸惑ったような切ない表情を思い出して胸がざわつく。

今思えばパーティーへの出席について許可を出したとき、少し様子がおかしかった。

まさか…とじわじわ嫌な予感が確信に変わろうとしている最中、ニーナから追い打ちをかけるような真実が告げられる。



< 32 / 65 >

この作品をシェア

pagetop