聖なる夜の願いごと


「エレナ様はシルバ様と行きたかったんですよ」

「エレナが俺と?」

「エレナ様がおひとりでクリスマスパーティーに参加したいとおっしゃいましたか?」


頭の中を透かされたようなその問いにシルバは何も答えることができなかった。

シルバは深く溜息を吐き出し、頭を抱えて昨夜のことを後悔した。

対するニーナはシルバのその姿を目の当たりにし、少なくとも意図してエレナをひとりでパーティーに行かせたのではないと思って安心した。



「確かに昨日はどこか様子がおかしかった。パーティーへの出席許可を出したというのに浮かない顔をして…あれは俺と行きたかったからだというのか」

「わかりにくいですよね。エレナ様のことですからきっと言い出せなかったんでしょうけど」

ニーナはシルバに同情したように苦笑いを浮かべる。

本当にわかりにくい。一緒に行きたければ一緒に行きたいと言えばいいではないか。

エレナが一言「行きたい」といえば何を投げ打ってでも時間をつくるというのに。

それを一番わかっていないのはエレナ自身かもしれない。




「今から行っても間に合いますわ」

「そうだな」

オベール公爵の屋敷までなら馬を走らせて五十分ほど。

パーティーが始まって間もないはずなので、終わるころまでにはつきそうだ。

今頃エレナはどうしているだろうか。

ブラントン夫人もいるからひとりではないだろうが、パーティーに行きたかった理由が理由なだけにきっと寂しい思いをしているのかもしれない。

シルバは焦る気持ちを抑えつつ、オベール公爵家へ馬を走らせた。


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