血よりも愛すべき最愛
欧米化現象も踏まえれば、日本にない美を持つ倫敦市は観光名所として繁栄し、栄華を極め、二千年の歴史が経とうと衰えることは知らず、都市自体が芸術品として来る者の感動を誘う。
『彼女』もまた、そうであった。
歴史ある名所の数々に、ゴシック様式建物が立ち並び、道行く人は日本人だけでなく、他国の人も目立つ。
絵本の中にでもいるようだ。踏む大地が、土やアスファルトでなく石造りというだけでも日本に住んでいた自分には新鮮だというのに。
単なる、『借宿』とするには惜しいほどだ。ここに住み続けたいとも思えど。
「無理、ですよね……」
夜中の人気がない路地裏を歩くしかない私は、と『彼女』は白いケープについているフードを深く被る。