倫敦市の人々
映像は、倫敦市市長の緊急記者会見の様子を映し出したものだった。

画面の中で、市長は告げる。

『ご説明しました通り、この倫敦市では人知れず、人間ではないもの達による事件事故が幾度となく繰り返されてきました。倫敦市で暮らしている方なら御存知であろう倫敦大火や猟奇殺人事件も、全てこれら人でなきものが関係するものだったのです』

「ねぇ…これ!」

テレビを指差す美麗。

何と市長は、これまで倫敦市でもごく一部しか知らない筈の、都市に住む他種族の存在をテレビで公表していた。

こんな真似をすれば、倫敦市民どころか世界中がパニックに陥る事は間違いないというのに。

しかし、彼の語る事はそれだけではなかった。

『私はこの倫敦市の市長就任以来、それら人でなきものと人間が共存できる都市を目指し、人知れず尽力して参りました…ですが、この倫敦市で水面下で繰り返される勢力同士の抗争は、最早私の手には負えぬ所まできております…血で血を洗う争いを繰り返すこの暗黒郷(ディストピア)は、私の思い描く理想郷(ユートピア)には成り得なかった…そこで、私は本日を以ってこの倫敦市を放棄、一度ゼロに戻そうと決断致しました』

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