もう一度、あの夏にもどれるなら。
・・・莉子side・・・

道中は酔いやすい茜が酔って大分グロッキーな状態になった事以外はたいしてアクシデントもなく、順調に進んだ。

早苗の言っていたコテージは私達11人で使うにはあまりにも広く、豪華だった。

小さな洋館のような外観、少し歩いた所にある湖、その湖から流れている川。まるで絵本の世界に迷い込んだようだった。

こんなとこに泊まれるなんて素敵だね、何かの登場人物みたいだね、そんな風に瑠璃と笑いながら話した。

「じゃあ、俺は麓に戻るから。ココ電波届かないし、雨降ると川が氾濫するし…気ぃつけろよ?一週間したら迎えにくるしまァ大丈夫だろうが」

既に少し日焼けしているおじさんはそう言うと帰って行った。電波の届かない、雨が降ると孤立する小さな洋館…本当におとぎ話みたいじゃないか。

「ね、ね、莉子。ホントにラッキーだよね。最後に皆とこんなとこに来れて…豪華だし、なにより綺麗だし!」

瑠璃はそう言って嬉しそうに笑った。

「…旅行気分の所申し訳ないけど、まずは仕事よ。ここ見た目は綺麗だけど…中使われてないから汚いのよね」

…それはつまり、私達で掃除をしろという事か。

「………それは問題だな。布団なんかは干してるのを使うとして…早急に取り掛かるぞ、夜までには終わらせる」

あ、正宗のスイッチ入ったみたいだ。潔癖症というかなんというか、汚れているのが許せないみたいで…たまにこうやってスイッチが入る。

女子群はやる気(ただし花音を除く)みたいだし、男子は…まぁ、やってくれるだろう。

「掃除用具は倉庫の中にあるらしいから取って使ってちょうだい。ただし、危ない物もあるからくれぐれも気を付けてね」

「危ない物…って、何?」

綾那の疑問はもっともだと思う。そんなに危ない物があるようには思えないのだが……

「小さいけど斧みたいなのがあるのよ。例え小さくても斧は斧でしょ?危ないわ。怪我させたら悪いじゃない」

「んだよ。そんな事か。川野の言う通りならそんなに使われてねぇし、刃も鈍ってるって。そんなに心配すんなよ」

右京はそう言って足取り軽く倉庫の方へ歩いて行く。早苗は川野と呼ばれるのに慣れてないからか少し間を開けて「そうね」と呟き、右京の後を追った。

「ホーラ、何ぼーっとしてるの?あたし達も行って手伝うよー?」

早く行こう、というように私の腕を引っ張る茜。ちょっと痛いよって返事して、笑いながら先に行った皆の影を追い掛けた。はやく掃除しないと、日が暮れちゃう。

倉庫前では政宗と早苗がもう指示を出し始めてる。急いで掃除して、晩御飯を作ろう。今日は何つくるのかな…

そんな事を考えていた。今思えばこの時は凄く平和だったんだろう。

…これからたった数時間後におこる事なんて、まだ知らなかったのだから。

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