銀狼と愛犬
訓練所で出迎えてくれたのは訓練士の佐伯裕太(さえきゆうた)だった。
「神山さん!シェパードで本当に良いのですか?父上に叱られませんか?」
佐伯が不安気に尋ねた。
「ハハハ!御心配には及びません!…親父はちゃんと説得しますし…犬を見れば気持ちも変わりますよ!」
林太郎は力強く答えた。
早速生まれて1ヶ月の子犬と対面した林太郎は四匹の中の一番小さい雄の子犬を抱き上げた。

「そいつは小さくて…おっとりしてますよ!…大丈夫ですか?」
佐伯は首を傾げた。
「最初に目が合いましたからね!…運命的なものを感じますよ!」

林太郎は脇目もくれずその子犬を選んで名前も付けてしまったのだ。名前は吉(きち)貰う前から決めていた。



それから暫くして林太郎は吉を引き取り新しい生活が始まったのだ。
林太郎の父親の唐吾(とうご)は、林太郎の言った通り吉を見た瞬間に吉の虜になっていた。まだ幼い吉は愛らしく林太郎達に甘えていたが、切り替えも早く賢い仔で忠実に育って行ったのだった。
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