Never say Love you



帰宅してうさぎにただいまを告げるとうさぎは鼻をひくひくさせる。


帰ってきてすることと言えば、食べて、シャワーを浴びて、スマホで遊んで、本を読んで寝る。


特別など、365日何もない。


恋人のいない29歳の私にとって誕生日など、苦痛以外の何物でもない。

近づく30代、一人きりのバースデーケーキ、自分へのプレゼント。


誕生日を祝福するという小さい頃からの概念が余計に惨めな自分を作る。


たまに、私が死んだらうさぎはどうなるのかと考えることがある。


だって、私の死後の不安と言えばそれくらいしかない。


私が今死んだら間違いなく孤独死だ。


数日経過して、鍵を持っている母が気づいてくれるだろう。


いや、下手をすれば一ヶ月。
せめて綺麗なうちに発見して頂きたいものだ。


そんなことを考えているうちに、ついついうさぎ小屋へ大量に餌を入れてしまう。



ついつい涙が零れてきて、うさぎを抱きしめる。


想像してしまう。
ハチ公。


うさぎだから、うさ公。


あれ、ハチ公の”公”って、なんだっけ?



そうして、ネットで検索しているうちに、涙はいつの間にか消えている。




< 11 / 59 >

この作品をシェア

pagetop