戦と死の神の忘れ形見


「キオはもういねぇってさ」

 夜空から星と月を取り去ったような空間で、赤い男がもう一人の男と向かい合っている。

「ミオルズガリナ、お前何も知らないわけ?
 ロスオイトで消えたみたいだぞ」

「知らな~い」
 幼い口調の女の声が響く。無論ここに見える二人のものではない。

「存在法則が違う。狭間に消えたんだろう」
 腕を組んで言ったのは、雪よりも白い髪に銀の双眸の男。多少いかつい雰囲気がある。
「こうなってはもう追いかけようがない」

「で、どうするわけ? スクーヴァルちゃんは」
 自分で噛んだ耳の感触を味わっているのだろう。口元に意味ありげに指を寄せながらセシトイオは言う。
「器として使えないようにしてもいいよな? 俺様が」

 白髪の男は、興味なさげに、
「好きにしろ」

 満足そうに頷くと、
「楽しみだなぁ。処女って身体撫でるたびに……」

 言い終わる前に、白髪の男はいなくなった。

「なんだよ、付き合い悪りぃな……」


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