ミッドナイトインバースデイ

 半分程空いたグラスに、シャンパンをついでくれたのは、同僚の美緒だった。文芸誌を担当する紫織とは部署が異なり、美緒はファッション雑誌を担当としている。
 常に流行の先端を追う彼女は、どんなに忙しくても身なりを決しておろそかにはしない。どちらかというと、仕事に没頭すると全てが見えなくなる紫織にとって、彼女のそういうところは尊敬するところのひとつだ。

「けどさ、紫織。実際のところ彰から、まだ連絡あんの?」
「…どうでもいいよ。もう、三年も前のことだもの。紗奈ちゃん、ほら、美緒のグラス空いちゃってる。シャンパンおかわり!」
「はーい。了解しました」

 とたとたとシャンパンボトルをとりに行く紗奈の背中を見送る。隣で、美緒がひとつため息をついた。

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