レイプ

 澪が無言で唾を飲み込むと、意外にも男はあっさりと首から手を離した。

「いい子ちゃんのおまえが家に帰っても、軽はずみに犯人の顔を暴露せずにすむ理由を与えてやるよ」

 男の手が伸びてくる。
 澪の身体に。
 足が澪の両膝を押し開く。

 澪は呆然と男の行動を見つめていた。乱暴に制服のブラウスが破られて、スカートの中に手が潜り込むのを。

 澪にとってそれは初めての行為だった。
 本当ならもう少し成長して、異性に恋をして、心が満たされるはずのことだったのに。
 相手は名前も知らない、その日会ったばかりで、ろくに会話も交わしていない犯罪者。

「ゃ、――――!!」

 澪は声にならない悲鳴をあげた。
 どん、と拳で窓を叩く。

 水滴の泳ぐガラスの向こう側に、自分を連れてきた張本人がいる。
 澪に親しげに話しかけ、どこか仲間意識を抱かせた人物が。

 ビニル傘を手に立ちつづけている彼に助けを求めようとして、背後の男が漏らす嘲笑に我に返った。

 わたしはなにをしようとしているの? あの人だって同類じゃない。

 男が後部座席に移り、乱暴に自分を引き倒すまで――澪は、ガラスの向こうを無表情で見つめていた。

< 11 / 14 >

この作品をシェア

pagetop