レイプ

「なにをしている!?」

 批難じみた、けれどひどく取り乱した声が耳に届いたとき、澪の身体の内側を破壊する凶器が抜けた。

 涙と汗でくしゃくしゃになった顔に髪が張りついている。おまけに窓から差し込む光のない車内は暗く、声の主を見上げても表情はわからなかった。
 ただ、ひどく怒っている。責めているのは澪を今まで蹂躙してきた男に対してだ。

 深く息を吸い込むと、車内に充満していた不快な匂いの代わりに、冷たい雨と風が口に飛び込んでくる。

 呼吸が少し楽に感じて、何度も口を開いては閉じる動作を繰り返していると、声の主が澪の腰に手を回し、身体を車外に引きずり出した。

 冷たい雨粒が全身を打ち、澪の身体はそれを心地よく受け入れた。
 熱した身体が先程までの行為に苦しみ、ようやく解放されて安堵しているからだ。
 何年も着てきた初等科の制服は破れられていて見るも無惨な有り様なうえ、他人の体液が文字通り自分を汚していて不愉快でしかたがない。

 できることなら脱ぎ捨ててしまいたかったが、そんなことをいつ誰に見られるかもわからない場所でできるはずもなかった。

 全身の力が抜けて動けない澪を支えたまま、自分を車外に引きずり出した男が言う。

「藤田、おまえ、なにをしたかわかっているのか!?」

「そんな怖い顔するなよ、ただの口止めだろ?」

「こんな子供に――」

 自分を獲物として捕らえていた獣が肩を竦めるように言い、背後からの声は怒りに震えている。

「子供じゃなきゃいいのか? 例えば誘拐したのが女子大生なら? おまえも混ざったか? 結果は同じだろうが。おまえは汚ない手は使わない。犯罪に手を染めてるってのに、変なとこで正義感振りかざして止めるんだろうが」

「藤田っ……!」

 怒りに満ちた叫びとともに、腰に回った手が離れかけたが、澪の身体が滑り落ちそうになり、慌てたように手の力が戻った。

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