魚、アクション
魚は七つの海を渡った。
冷たい海もあれば
暖かい海もあった。

見たこともない綺麗な彩りの魚や
変わった形の生き物にも出会った。

ある時、
深く深く潜った魚は
とても年老いた魚に出会った。

魚は水面から僅かに届く月光で
何とかその存在に気づいた。

年老いた魚はどうやら
目が見えないようだった。

いや、
目が元より無いようだった。

確か深い海の底には
必要ないことから
目が退化してしまった
生き物達がいると男に聞いたことを
魚は思い出した。

「こんばんは。」

魚は行儀よく声を掛けた。

「ああ、ちょうどよい。
月は出ているのか?」

年老いた魚が聞いてきた。
挨拶を無視された上、
突然の質問に魚は少し
ムッとしたが

「出ていますよ。」

と、
素直に答えた。

魚は年老いた魚が
何か言うのを待ったが
年老いた魚は黙ったまま
僅かに月光が差し込む
水面の方へと体を向けているだけだった。











「見えるんですか、月?」

魚は年老いた魚が
目が見えないことを
分かった上で敢えて聞いてみた。

意地悪な質問だなと
思いながら。

「お前には見えないだろうな。」













思いもよらない
答えが返ってきた。
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