女装男子VS男装女子。
ひとりであわあわするあたし。

蓮はひっぱたかれた頬を押さえ、あたしのことを驚きの目で見てくる。

「あ、天野?ほ、本当にどうした?」

「べつにっ…どうもしないし!本当何もないから!だから、あっち行って!あっち行けったらあっち行け!」

バッと蓮に見えないように紅く染まった顔を両手で覆うようにして隠すと、あたしは蓮をポカポカと叩いて自分から遠ざけた。

「なんなんだよ全く……」

ぶつくさいいながらもあたしから距離を取る蓮。
あたしはそんな蓮を無視しながら、顔の火照りを手で扇ぐようにして冷ます。

「き、休憩の時間はもうすぐ終わりでしょっ。早く戻んなさいよ」

「あぁ……そうだなって……お前も休憩終わりだろ?一緒に教室戻ろうぜ」

「嫌。」

「なんでだよ」

「トイレに行くから。……もしかして、あんた、トイレにまでついて来るつもり!?」

あたしは信じられないといった目で蓮を見る。

「行くかっ!!それじゃただの変態じゃねーか!……わかったよ、オレひとりで教室戻る」

しぶしぶ、といった感じで蓮はボソッと呟くと、ひとりで教室に戻って行った。

残されたあたしは、とりあえずトイレへと向かう。

そして、鏡に映る自分を見て、驚いた。


……何なのこの顔。

真っ赤じゃないの…………


蓮に見られなくてよかった……。


心の底からそう思った。

見られていたら、
きっと、絶対になんで真っ赤なのか問い出されていたことだろう。
それはめんどくさい。
……というか、あたし自身もよくわかっていないから答えようがない。

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