女装男子VS男装女子。

あっくんとそんなことをしている間にも、確実にあたしに近付いて来る蓮。

「天野!聞けよ!」

嫌だ嫌だ聞きたくなんかねぇよ!

あたしはあっくんの側に寄りながら、蓮の声が聞こえないようにと耳を手で塞ぐ。

「おい!」

あー、あー、きーこーえーなーいー!!

これは幻聴。

現実じゃないの。だってあたしは耳を塞いでるんだから、蓮の声が聞こえるわけないじゃないの。

もう、あたしってば疲れてるのかなあ?

こぉんなに聞きたくない蓮の声が聞こえるなんて、最悪だよ。

はっ!もしかして、これは夢!?

「夢なん「夢じゃねーよ」」

ヒッ!

あたしの肩がビクリと跳ね上がる。

耳を塞いでいたはずの手は、誰かの手に外されていて。
何故かわからないけれど、あたしの手はがっしりと逃げられないように掴まれていて。

しかもあたしの現実逃避を否定したこの声は…………


あたしの知る限り一人しかいない。


ギギギギと音がするような動きであたしは後ろを振り返る。


そこには……

「オレを無視するとかどういうこと?なあ、天野?」

青筋をたてた鬼(あ、間違えた蓮だった)がいました。

< 185 / 232 >

この作品をシェア

pagetop