女装男子VS男装女子。

あたし、男装やめます


「おーい、天野ー。天野ってば!」

「んもー…なに?うるさいんだけど」

睡眠の邪魔をされ、あまり機嫌が良いとはいえないあたし。

「起きろって!もう朝だぞ!」


ガバッ


勢いよく起き上がる。


……朝?そんなはずは…………だってさっき寝たのは夕方だったはず。

ということは今は夜だぞ?

コイツ、なに言ってんだ?
とうとう頭イカれたか?


「イカれてねぇよ!朝だっつーの!お前寝すぎなんだよ!!」

「……時計は?」

「ほら」

見せてもらった時計の針は、7時指していた。

「まだ夜じゃん」

もう一度、ベッドに潜りこもうとすると、蓮がそれを阻止した。

「夜じゃねぇって。空明るいだろ?」


カーテンを開けて、あたしに見せる。


………………ほんとだ。


「どんだけ寝てんの………あたし…」

はぁ……と、額を押さえる。


つうか、学校行かないと。

「蓮、カツラ取って」

「どこにあんだよ、そんなもん」

「そこらへんにあるでしょ。黒いもさもさした物体が」


あたしが置いてそうな場所を指指して、蓮に取れ、と命令する。

「ねえよ、カツラなんかどこにも」

「はあ?ちゃんと探したの?」

「探したわ!」

蓮が少し大きめな声で言う。

そんな蓮を見てチッ、と舌打ちをすると、「使えねぇ男」と呟いた。

「んなっ!?」

「もーいい、どいて。あたしが探すから」

ベッドから降りて、蓮をどかしてカツラを探す。


……ない。


なんで?

「……れん」

「んだよ」

「あたしのカツラ、盗った?」

少しの沈黙が流れると、蓮は怒ったように言った。

「盗るわけねぇだろバカかお前は!」

「あたしはバカじゃない。蓮が盗ってないとしたら、……なんでないんだろ??」

むー?と考える。

えっとー、あたし昨日何もないところでずっこけてー、カツラ取れちゃってー、あっくんと一緒に逃げてー……


「あ。」


カツラ取ってくんの忘れた。

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