極上の他人
ナンパ、だったのかどうかはいまだにわからないけれど、確かに『マカロン』の最寄駅に降り立った時に二人連れのサラリーマンに声をかけられて食事に誘われた。
それはきっと、艶ちゃんのような綺麗な女の子に向けられた言葉であって、私には関係のないものだ。
モデルのような見た目で男性からの人気も高い艶ちゃんの側にいる私はついでに声をかけられたようなもので、気にすることもないのに。
だから、輝さんが心配することもない。
それなのに。
「あ、さっきナンパしてきたオトコから連絡先もらってたでしょ?連絡して飲みに行くなら私も付き合うよ。大きな会社で働いてるみたいだから、繋いでおいても損はないんじゃない?」
「あ、あ、そんな、艶ちゃん、飲みになんて……行くわけないし」
ナンパされてついていくこともないのに、敢えて自分から連絡を取って飲みに行くなんてあり得ない。
艶ちゃんはそんな私の性格を知っているはずなのに、どうしてそんなことを言うのかわからない。