極上の他人


艶ちゃんとの会話が弾み、楽しげな横顔を見せる輝さんに切なさを感じながら考え込んでいると。

「ふみちゃんも、アイス大好きだよね」

メイン料理の大皿を私の手元に置いてくれた千早くんの声が聞こえた。

「黒蜜だけじゃなくて、ベリーソースも用意できるよ?ふみちゃんにはそっちの方がいい?」

黙り込んでいる私を気遣ってくれるような声。

私が輝さんと艶ちゃんの楽しげな会話に不安を覚えていると、気付いてくれたんだろう。

「じゃ、私はベリーソースでお願いします」

千早くんは、小さく笑った私の頭を軽く撫でてくれた。

その手は温かくてほっとするけれど、やっぱり私が触れて欲しいのはこの手じゃないと改めて気づく。

ちらりと横を見ると、艶ちゃんはビールをおかわりし、相変わらずおいしそうに箸を動かしている。

その合間に話している輝さんとの距離感が気になって仕方がない。

輝さんにしてみれば、毎日お客様に接する態度と何も変わらないんだろうけれど、それでも私は切なくなるし、私だけを………。

一旦認めてしまった自分の素直な感情に、自分自身揺らされてばかりだ。

決して輝さんにその気持ちを伝えるわけにはいかないけれど。

それでも、輝さんの全てが欲しくてたまらない。

そして、気になることと言えば、さっき輝さんがポケットにしまいこんだ名刺とメモ。

名刺はたぶん……私が男性にナンパされたことが心配で、取り上げたんだろうけれど、メモまで取り上げる理由が思いつかない。

それまでは真奈香ちゃんに私から連絡するつもりはなかったけれど、こんなことがあった今では彼女のことが気になって仕方がない。


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