極上の他人


私が輝さんのお店で躊躇なく夕食を食べられるようになったきっかけは、些細なものだった。

『俺は自分の意志で史郁を見守っているし側にいるんだ』

そんな輝さんの言葉が私の心に強く響いた。

簡単な言葉だけど、私にとってはとても重いもので、聞き逃すなんてできなかった。

私はこれまで、周囲の愛情に支えられながら生きてきたけれど、その愛情は両親が私を見捨てたことによって生まれたものだ。

じいちゃんやばあちゃん、そして誠吾兄ちゃんだって、私が両親と仲良く暮らしていれば、私にあれほど心を砕き、優しさを与えることはなかったに違いない。

両親が親としての子供に対する義務を全うしていれば、じいちゃんとばあちゃんは子育てに再び苦労することもなく、ゆったりとした退職後の時間を過ごすことができたはずだろう。

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