極上の他人


誠吾兄ちゃんだって、友達や恋人と過ごす楽しい時間を削って私の学生生活を応援することもなかったはず。

大学生の男性が、たとえ姪っ子だからとはいっても、参観日に顔を出したり、役員にあたったからといってPTAの仕事を引き受けるなんて、嫌だったに違いない。

バイトだって休まなくちゃいけなかっただろうし、勉強に影響もあったはずなのに、嫌な顔なんて一度も見せなかった。

それどころか、『かわいい史郁のためなんだから、気にするな』と言って身軽になんでもこなしてくれた。

そんなじいちゃんとばあちゃん、誠吾兄ちゃんの愛情を疑ったことはない。

けれどそれは、私の境遇から生まれたものだ。

否応なく、そして逃げることもできないまま、私を愛し、育ててくれた。

両親が私を捨てたことに対する責任もあったと思うし、身内として、それは当然のことかもしれないけれど、私は何もかもを忘れてその愛情に浸ることはできなかった。

いつも心のどこかで遠慮し、迷惑をかけないように気を遣っていた。
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