極上の他人


そして、輝さんが感情を消したような瞳で私を見つめる瞳の奥の不安は、過去の自分を悔やむものではなくて、私がどんな反応をみせるのかを推し量っていることによるものだともわかる。

いつも落ち着いている輝さんが、不安をぐっと堪える様子は素敵過ぎて見応えもあるけれど。

切なげに瞬きを繰り返す輝さんがかわいそうに思えてくる。

それに、私がどう思うのかを窺うほど、輝さんは私を気にしてくれているとわかっただけで今は十分だ。

だから、『虹女』という言葉によって揺れる私の心は、輝さんの過去によるものではないと言わなければいけない。

「えっと、輝さんが塾の講師をしていたことは知っていて……」

「いいよ。史郁が言ってくれた言葉だけで、いい。それに、俺は女子高生に手を出すほど女に困ってたわけじゃないから」

小さな声で話し始めた私の言葉にかぶせるように、輝さんの声が響いた。

視線を輝さんに向けると、さっきまで浮かんでいた不安や寂しさの欠片すら見えなくて、くつくつと笑ういつもと同じ声。

首を微かに傾げにやりと笑ったかと思うと、すっと私の腕を掴んで抱き寄せる。

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