極上の他人


「権利って、言ったのはどういう意味だ?」

決して機嫌がいいとは思えない低い声に、私の心はさらに沈んでいく。

真奈香ちゃんが座っただろう助手席にいるだけでも居心地が悪いのに、輝さんの視線は私をどんどん落ち込ませていくようだ。

「何か嫌なことでもあったか?ずっと俯いているだけだろ?」

「あ、別に大したことじゃなくて……」

「大したことかどうかは俺が決める。それに、史郁が何かに悩んでいるならそれだけで、俺にとっては大したことだ」

「は……?あ、あの」

「虹女か?」

探るような輝さんの声を聞いて、視線を上げると、心配そうな表情のまま運転している横顔があった。

流れる街灯の光が顔を照らして、輝さんの表情は明るくなったり影が差したり。

そのせいか、今輝さんが何を思っているのかよくわからない。

というよりも、亜実さんの家まで迎えに来てくれた時から、不可解な言葉と態度ばかりを向けられて、輝さんの全てがよくわからない。

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