極上の他人


小さな頃、その瞳に優しさと愛情が浮かんでいないかと神経質に覗き込んでいた自分を思い出して胸がぐっと痛くなる。

自分の存在を否定され、生きていることでさえ罪だとはっきりと言葉にして投げつけられた記憶が私の体を包み込み血の気が引くのを感じる。

足元から力が抜け、ふらり体が揺れた瞬間、私の体を抱きとめてその胸に引き寄せてくれた輝さん。

「史郁、大丈夫だ。俺が守るって言っているだろ?」

私の耳元に唇を這わせながら、慰め、勇気づけるような手の動きで私の体を撫でてくれる。

「俺が史郁を守るから、大丈夫。もう二度と、こんな傷を作らせるようなことはさせないから。今日で終わりだ」

「この傷……」

輝さんは、何度も私の耳を唇でたどる。

甘噛みするように何度も私の耳を熱くする輝さんの唇に、私の気持ちはとくとくと跳ねあがり、目の前にいる真奈香ちゃんをまともに見ることができない。

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