極上の他人


恥ずかしすぎる。

そんな状況を気に留める事もない輝さんを見ていた真奈香ちゃんは、呆れたように小さく息を吐くと、ぽつりと呟いた。

「輝先生……史郁さん、困ってますよ」

「いいんだよ。……傷つけるより、困らせる方がいい」

真奈香ちゃんと言葉を交わしながらも私の耳元をくすぐる吐息が離れることはなくて、ドキドキする鼓動を抑えることもできず、視線だけを上げた。

輝さんは私の目を覗き込みながら、真奈香ちゃんに向けて言葉を続けた。

「で?お誕生日のお祝いは、楽しかったのか?」

「あ……はい。お母さんが……予約してくれたお店で食事を」

「そうか。良かったな」

「ありがとうございます。それに、私のお願いを聞いてくれて……史郁さんを連れて来てくださって、ありがとうございます」

「いや、電話もらった時には驚いたけど、今日会った時、俺が会わせなかったら直接史郁に会いに行きそうだったからな。それは史郁にとっては酷なことだろう?……だけど、今日で最後にしてくれよ」

「はい……。わかってます」

輝さんと真奈香ちゃんの会話の意味が理解できない。

真奈香ちゃんのお誕生日って、今日だったのかな。

暗くて気付かなかったけど、よく見ると、淡いピンクのワンピースを着ている真奈香ちゃんはほんのりとメイクもしていて、この前展示場で会った時よりも大人っぽく見える。

ヒールの高さが三センチくらいのパンプスを履いている姿はとてもかわいい。

そうか、お誕生日だから家族で出かけていたのか。


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