極上の他人
手元に置いたスマートフォンをちらりと見ながら、史郁の声が聞きたいと思うが、既に深夜1時を回っていると気づき伸ばした手を止めた。
このところ新しい物件を任され忙しそうにしている史郁は、日ごとに痩せていくように思えて不安になる。
食事だけはきちんと食べさせているが、帰りが遅いせいで睡眠時間は少ない。
夕べも家に持ち帰った図面を仕上げていると言って早々に電話を切られた。
「どんどん強くなっているよな」
何を焦っているのか、仕事に意識を向けすぎる史郁に不満が増えていく。
……というより、結婚するって話はどうなってるんだ?
俺と史郁で誠吾先輩に結婚を前提にした付き合いを始めたと挨拶してから数年。